できちゃった結婚〜もしも俺が赤ちゃんになったら〜
しばらく黙り込んでいる俺に、希は小さい声で口を開いた。
「……堕ろすね。貯金おろせば、お金はなんとかなるし……。」
そう言って立ち上がった希の手を俺はギュッと握った。
「……りょ…「結婚しよう。」
彼女の言葉を遮って、俺は気持ちを伝えた。
一応…プロポーズ。
「……えっ…でも、私たちまだ20歳だし…仕事だってしてないじゃない。バイトなんかで生活出来ないんだよ?」
「わかってるよ、んなこと。俺、ちゃんと仕事探すし、贅沢できねぇけど…ちゃんとお前も赤ちゃんも守るから。」
「……凌。」
赤ちゃんを堕ろすなんて初めから頭になかった。
戸惑いがなかったと言えば嘘になるけど、俺と希の間に生まれた命。
なかったことにするなんて、絶対出来ない。
「……俺が旦那になんの嫌?」
少し不安げにそう聞くと、
彼女は涙目になった瞳を細めて小さく笑った。
「……嫌なわけない。……凌と私の赤ちゃん楽しみだね。」
そう言って、まだまだぺたんこなお腹を二人で優しく撫でた。
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