【短編集】翳りゆく部屋 ~サビシガリヤノオンナタチ~
“ピンポーン”

インターホンを押すと、少し外れた音が玄関の外にまで聞こえてくる。


有子は、合鍵を取り出して鍵穴に差し込んだ。


『もし、開かなかったら…』


一瞬、頭の中を過ぎった不安で、鍵を回す事を躊躇った。


“ガチャ”


思わず目を瞑ったが、有子の不安に反して、玄関の鍵が開いた。


『あたしの勘違いだったかなぁ…』

自分にそう言い聞かせて、部屋の中へと入って行く。





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