【短編集】翳りゆく部屋 ~サビシガリヤノオンナタチ~
この子?

私の前に居るのは、少しシワの目立ったスーツに身を包んだ“少年”


20才くらいなのかも知れないが、長めの前髪の間から覗く瞳は、少年そのもの……


「何?オバさんをからかって、楽しいの?」

私は、少し“ムッ”として見せた。


「気を悪くしたら、ごめん………。
でも、貴女に買って欲しい」


私も、30才を過ぎている。


こんな男の子の言葉に、動揺してる場合じゃない。





なのに私は、その少年を振り切って歩き出す事が出来なかった。





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