【短編集】翳りゆく部屋 ~サビシガリヤノオンナタチ~
何故だか、呼び捨てにされた声が、心地良い。

『野梨子…』


私は、自分の名前を思い出して来る。


もちろん、忘れた訳ではないが、改めて“一人の女”であると、思い出させた。


「ねぇ、シュウ?
普通はドコへ行くものなの?」

「ホテルが多いね」


多分、そうだとは思っていた。

シュウは、身体を売るのが商売だと………


でも、私に声をかけて来た事は“違う理由”だと、思いたかったのだ。


「分かったわ。
普段通りにしましょう」


私は、少し怒った事がシュウに伝わる様に、強い言い方をした。





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