■短編■-茜空-
『先輩は…私を通して誰を見てるんですか……?』
震える私の言葉に先輩は目を見開いた。
『私は…私は楓ですっ茜さん…茜さんじゃありませんよっ!!』
泣きながら叫ぶ私に先輩は眉を下げて、悲しい顔をする。
『私は…ずっと先輩のこと見てきました。だけど…先輩の瞳には私は写ってないんですね…私はっ…私は茜さんの代わりにはなれません…だからっ…だからっ』
"さようなら"
言いたくなかったその5文字を言って、無我夢中で走った。