■短編■-茜空-
◆確かな気持ち
『「さっむーっ!!!」』
冷たい風がびゅうっと私達の体温を奪う。
白い息を吐き出し、手を温めながら帰り道を歩く。
「ねえ楓っ朝からずっと聞けなかったこと聞くけど、昨日どうだった?」
『うん…嵐君喋りやすかった』
「でしょ?いい奴なんだ♪」
嬉しそうな顔でニコッと笑う美緒を見て、申し訳なさで少し顔が歪んでしまう。
でもね…でもね美緒…
『ごめん美緒…私はやっぱり…先輩が好き…嵐君と話して余計に実感したんだ…』
そう言った私を見て、美緒は眉を八の字にして悲しそうな顔をした。
「楓…でも…先輩は…」
『分ってる。あの人の隣りにいれなくても…それでも好きなんだよ…今はただ見てるだけで十分なんだ…好きでいるくらい許されるよね?』