■短編■-茜空-

「最近、5時になっても公園見ないね」


『え?』



カチャカチャとスプーンを拭きながらマスターは、きょとんとする私にふっと優しく微笑んだ。


「何があったかは分からないし、聞かないけど、自分の気持ちには正直になった方がいいよ?」


『…マスター…気づいてたんですか…?』


「そりゃこれだけ一緒に仕事してたらね(笑)…楓ちゃん…自分の気持ちに正直になるって簡単なようで実は凄く難しいことなんだよね…優しい人は特にさ…」



マスター…


マスターの言葉を聞いてそっと公園に目を向ける。


そこには、何度も見てきた空を見上げる先輩の姿があった。



見るんじゃなかった…
誰かを想う先輩の姿なんて…


先輩はずっと茜さんを好きでいるのかな。
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