ミナミの子。
第①章
私の名前は、林茉莉花。

父は日本人、母は韓国人。頼りないが優しい兄が一人。

私は父が50歳、母が35歳の時に大阪の西成というとこで生まれた。
周りの人は、遅く出来た子だからさぞかし可愛がられただろうと言うけれど

案外そうでもない。

出来の悪い子ほど可愛いというのは本当らしい。

父はいつまでもお漏らしをしていた兄を溺愛した。

母は、私が二人目だったからと割りと逞しく育てられた。


物心ついた時には両親の仲は悪く喧嘩の絶えない日々だった。

兄は非行に走り、私は絶対にこうはなるまいと誓った。

非行に走りたくとも、走れなかったのかもしれない。

兄という良い見本が近くにいたし、非行に走れるほど親を信用していなかった。

非行に走ったところで、自分の事は自分でしなければならないと分かっていたからだ。


父は優しいけれど頑固な人。友達も親戚付き合いもなく、一匹狼という名の相応しい人だった。

母は男に頼る人生。そうせざる負えなかった理由は今なら理解出来るところもあるが、その時の私には到底理解出来ることではなかった。

兄はというと、鑑別所と少年院の入退院の繰り返し。友達はたくさんいた。
友達を庇い捕まったこともあるくらい友達思いだが、全然家族思いじゃなかった。


林家の人達はだいたいそんな感じだ。


喧嘩ばかりで、離婚結婚を繰り返していた両親や

バカばっかりやってた兄。

離れて暮したり、また一緒に暮したり

一時母の男と一緒に住んだこともあったけれど


家族はやっぱり4人だけやと思った。



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