違和感~incongruity
第1章 見馴れた風景





 目が覚めた。夜更かしをしたせいで今朝はまだ眠い。



頭がボーッとしたまま、ベッドから起き上がった。



やっとのおもいで、いつもと変わらない手順で朝の準備を始めた。



トイレを済ませ、顔を洗おうとした時に、何か違和感を感じた。



とりあえずやり過ごし、キッチンに行き、いつもの様にトースターにパンを入れ、その間にインスタントコーヒーをカップに入れお湯を注ぎ込む。



あれっ?また、何かが違う。いつもと同じ事をしてるのに・・・何が違うのだろう?



そんな事を考えてる間に時間は過ぎ、家を出る時間がせまってきてた。



コーヒーで流し込む様に トーストを食べ、申し訳程度に歯を磨き終えると、慌てて着替え家を出た。



駅までの道。駅構内の様子。いつもと変わらない。しかし、何故か違和感が取れない。



3番線に登りの急行が入って来た。実に見慣れた光景だ。きっと気のせいだと自分に言い聞かせ、電車に乗った。



車内の中刷りに目をやる。昨日と変わらない文字が並んでいた。



あれ?そういえば今日は何曜日だったかな?



思い出せぬままに次の駅に着き、乗客が津波の様に押し寄せて来た。



気がつくと反対側のドア近くまで押しやられていた。



いつもの光景だ。でも・・・


それ以上は考えるのを止めにして、再び中刷りに目をやった。



それは、ゲーム機メーカーの新製品の案内だった。



バーチャル体験ゲームで、自分が体験したり、見た物をゲーム機が脳波を通じて映像化してくれて、それを別の人も体験出来るという機械を売り出した。



要するに、人の記憶までもシェアする時代になったと言う事だ。



もともと犯罪捜査に用いる為に開発された物を、ゲーム機メーカーが改良し、恋人同士や家族間で記憶をシェアしたりするために製品化した機械らしい。



お互いの気持ちが解り合えるから、結婚しない若者達の増加を食い止めるのにも利用できると考え、国もかなりの援助をしたという噂もあるが、全くもって根拠の無い話しだ。



いつの間にか電車は終電に着いた。



もうすぐ会社に着く。



またいつもの・・・



毎日が始まる。



いや、いつも過ぎる毎日が始まるのだ!




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