夏の事。
あかりは俯きながら言う。


「だって、私、他の人の子どもの事、身篭って、殺しちゃって。

そんなヤツが今更、自分の事を好きだって言ってくれる人の元と一緒にいても良いのか。

タケルは傷付かないか…とか…」


そこまで俯いて言ってたあかりに祖母は


「それはさ、タケルちゃんが決める事だろ。

あかりはそこまで卑下することはない。」

あかりはハッと祖母の顔を見る。

「確かにさ。

…驚いたわ、突然あんたのお母さんから電話きて

「あかりが屋上から飛び降りた」

なんて聞いて。

当の本人は3ヶ月も意識取り戻さんし、しかもお腹の中に子どもがいるって聞いた時にゃ、17歳のあかりには早過ぎるって。
もっと、体大切にせいっ!!って。
眠りこけてるあんたに怒鳴り付けたくなったわ。」


あかりはその言葉に俯く。

「けどな。
それはそれ。
これはこれ。

そこまで思ってる子いるのに、あんた後悔するぞ?
あんたが好いていて、相手も好いている。

それを反対するヤツなんか私が追っ払てやるわい。

…な?」


あかりの肩をしっかり掴みながら、あかりにウィンクする祖母を見て、あかりは


「ばあちゃん…ホントにごめんね…」

と言う。


祖母は

「あんた何回病院に来てから「ごめんね」って言うのさ。
もう聞き飽きた!!
あんたの「ごめんね」。

…素直になんなきゃ、ならんよ?
ばあちゃん、そっちの方が嬉しいわ。」

「…ばあちゃん…」


あかりがそういうと、祖母は、あかりの体をくるりと玄関に振り向かせ

「さぁ行ってこい!!

タケルちゃんが待ってる」

と、トンと背中を優しく叩き、外出するように促した。

「…うん…」


「…あとな、あかりの母さん、あんな風に言ってたけど、ホントはあかりが心配で仕方ないからだ。

分かってやってくれないか…?」


あかりにそう言った。
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