夏の事。
祖母はあかりが屋上に身を投じ、意識が戻らないと父から連絡を受け、祖父と一緒に慌ててやってきた。

祖父はあかりが目覚めてからすぐに、「畑があるから…」と、帰ってしまったが、祖母はこうして、毎日の様に来てくれる。

汗でびっしょりのあかりを見て
祖母は

「随分うなされてたねぇ……ほれ、拭いてやるから服脱ぎなさい。」

と、ベッドの上体をリモコンで起こし、あかりはパジャマのボタンを外す。


ドポポ……

病室にあった洗面器にケトルでお湯を貯め、タオルに浸した。


タオルで拭いた部分がじんわり暑くなったあと、ひんやりする。




「あかり。体の調子はまだ戻って来ないかい?

ばあちゃん、あかりの好きなふきの煮物、作って来たんだけど……」

ばあちゃんのふきの煮物、大好き…。

けど、ごめんね…。


「ばあちゃん…ごめん…。
今、食欲がないの…。」

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