夏の事。
「ですから、何度も申し上げた様にこれを事件として立証すると言うことは…」

恰幅の良い警察の刑事が困惑した声でさゆりを諭す。

「何故それを決め付けるんです?
この子が誰かに突き落とされたとか
そういう線では調べられないんですか?!」


「…調べた所でどうなるんですか?
お宅の娘さんは目覚められた時に冷静な状態では無かった。
屋上から飛び降りた時お腹にも子どもがいた。
どんなに話を促しても、お話が無理な状態ですし今お話をしても、却ってあかりさんの心の傷が増える状態ではないですか?

この場合ですと、私共はあかりさんを保護して、決まった機関で治療を受けて貰う。
それしか出来ないですよ」


あかり自身、自分が三ヶ月前起きた事を人にいう気がなかった。

信じてた親友や、恋人に裏切られて、人を信じたくなったし、尚且つ思い出したくなかったのだ。

そして、死にたくて仕方がなかった。


自分自身の行動を考え、事件としての立証を強く求めてる母の姿に、あかりは苛立ちを隠せない。
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