夏の事。
(そんなあいつが、なんで…?)

約5年も会っていないのだから、覚えていないのは無理は無い事かもしれないにしても。


あの人懐こい笑顔があんなに暗い表情になるのが、タケルには信じられなかった。


あかりの夏休みの長い旅の終わりの時を思い出す。


『ひぃ〜…ん、タケちゃーん』

と言いながら、タケルに抱き着き

『また来いよ』

と、額にキスをしたあの時の思い出。


「また来いよ」

そう言って、毎年夏の頃に良くあかりは来ていたが。

5年前…タケルが13歳の時から、パタッと来なくなった。

毎回遊んでは、あいつは屈託の無い笑顔を浮かべていたのに…。


(あいつ、どーしたんだ?
…じいちゃんかばあちゃんに聞いてみようかな…?)


乗り込んだトラクタで、ジャガイモに農薬を散布し始めたタケルはそう思った。


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