黒ユリのタンゴ
ところが、翌日の金曜日。


私と神田君がどきどきしながら「文芸部の黒いうわさ(やや誇張)」についてボスに話をすると、アハハ、とボスは笑うではないか。


「毎年この時期にはそんなうわさが流れるんだよ。ま、実際ちょっとした揉め事にはなるんだけどねえ」


正直、ちょっとガッカリ。

神田君はさらに事件のニオイを期待していたらしい。
もっとガッカリしてる。


・・・でも、揉め事ってなんだろう。

なんだか気になる。


「まあ、今日光永さんが休んでるのは関係ないと思うけどさ、誰が文芸部代表、いや『ミス文芸部』になるかでちょっと、ね」


ボスの説明はこうだった。


毎年百人一首大会でかるたを詠むのは文芸部代表と決まっている。

言うならば、文芸部にとっては晴れの場だ。

そうこうするうちに、勝手に誰かが詠み手を『ミス文芸部』と呼び始め、文芸部内でもそれがひとつのステータスとなってしまった、というわけ。


「そろそろ決める時期だけどなかなか決まらずに揉めてる、ってオチじゃないかな」
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