黒ユリのタンゴ
「そうなんだ。3年は誰も立候補しなかったんだ」

ボスはそれを聞いてちょっと驚いているようだった。


「ええ。山崎さんは最近いらっしゃらないからご存知ないかもしれませんけど」


ちょっとだけ光永さんの声色が恐くなる。
どうやら最近のボスは幽霊部員のようだ。


「秋の文芸コンクールが終わってからは、他の3年生もほとんど来なくなって」


そっか。とつぶやくと、ボスは黙り込んでしまった。

それっきり、この話は終わってしまったのである。




すっかり恒例になった、購買横でのお疲れ様会。

今日のドリンクは、ココアにしてみる。


今日の二人の話題ももっぱら「文芸部」について。


不謹慎ながらも、うわさの正体にお互いガッカリする。

神田君は「ミス文芸部」についても、「ありがたみが薄れた」とガッカリしているようだ。

どうやら『ミス』にかなり期待していたらしい。
< 60 / 205 >

この作品をシェア

pagetop