黒ユリのタンゴ
カフェオレが三つそろったところで、いよいよ勉強会が始まった。


「まず数学からね。教科書の50ページのこの数式と・・・」



私と智香は、合わせて教科書を開く。


私達のそのページは、『テスト』と几帳面に書かれた神田君のものとはなんとも対照的だった。


私の教科書は真っ白。いつでも後輩に譲ってあげられます。

そして智香の教科書は、数学のハム助の似顔絵やいろいろなイラストで埋まっていた。
(またうまいんだ、これが)


思ったよりひどいね、とつぶやく神田大先生。


私達はあわてて、大先生の教えを書き写していく。

数学、英語、日本史、世界史・・・。



一通り出題箇所を確認し終えると、もう8時になっていた。

カフェオレも何杯お代わりしたことだろう。

「こんなに飲んだら、今日は寝付けないかもね」


アハハと笑う私に、神田大先生は最後まで厳しかった。

「いいじゃない、しっかり勉強できるよ」
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