きみが見た光
その瞬間――

カッチーン!!

俺は思いっ切り不機嫌な顔を浮かべて、立ち上がる。そしてかばんを手に取ると、無言で玄関に向かう。

「あ…」

奈緒もすぐ立ち上がり、そんな俺の後を追い掛けて来た。俺は彼女に背中を向けたまま靴を履いてすっくと立ち上がる。

「…でしゃばって悪かったよ」

俺は振り返りもせず、低い声で言い放つ。そして、ドアノブに手をかけると、乱暴にドアを開けて部屋から出て行ったのだった。



あほか。
心配して損したっ

無言電話の犯人は橘しか有り得ない。犯人の肩を持つなんて、あいつはどこまで人を見る目が無いんだよっ

俺は、怒りに任せてペダルを漕いでいた。

しかし、ふとこれが何の怒りなのか疑問に思う。

溜息を吐き、息を整えた。

< 104 / 161 >

この作品をシェア

pagetop