きみが見た光
橘に、俺は嫉妬してる…?

いや、すっかり騙されてるあいつにイライラしてるだけだ。

ついさっき、俺の口からでしゃばるように飛び出したあの言葉に、もう意味など成さない。

『…俺がそばにいることで安心できるなら、いてやるよ』

笑える。
何でこんなこと言った?

あいつのため?
自分のため?

…自分のため?



俺は、ペダルを漕ぐ足を止めた。車輪だけカラカラと音をさせてバランスをとる。

「…チキショ…っ」

平坦の道ではスピードが保てず、すぐに倒れそうになる。その手前で、また足に力を込めてぐんと前に押す。



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