きみが見た光
結局、この日は彩夏と話すことができず、彼女は部活が終わったあと、野崎と帰って行った。
たまたま部室で後片付けしたあと、忘れ物に気付き教室に戻るとき、二人を下駄箱で見掛けたのだ。
後ろ姿だったため、彩夏の表情までは解らなかったが、とてもじゃないが好きな人といるときのウキウキ感はまったく感じられなかった。
忘れた携帯をしっかりかばんに入れ、帰ろうと廊下に出る。すると、教室を見回っている橘が、いつもとなんら変わらない様子でこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
俺は無関心そうに通り過ぎようとしたが、橘は一瞬視線を落とした後、立ち止まったのだ。
「榊」
俺の背中に向かって、橘が口を開く。俺は黙って立ち止まった。
たまたま部室で後片付けしたあと、忘れ物に気付き教室に戻るとき、二人を下駄箱で見掛けたのだ。
後ろ姿だったため、彩夏の表情までは解らなかったが、とてもじゃないが好きな人といるときのウキウキ感はまったく感じられなかった。
忘れた携帯をしっかりかばんに入れ、帰ろうと廊下に出る。すると、教室を見回っている橘が、いつもとなんら変わらない様子でこちらに向かって歩いて来るのが見えた。
俺は無関心そうに通り過ぎようとしたが、橘は一瞬視線を落とした後、立ち止まったのだ。
「榊」
俺の背中に向かって、橘が口を開く。俺は黙って立ち止まった。