きみが見た光
また厄介な奴が…

そんなことを考えながら、俺は奴の言葉の続きを待った。

「お前は俺を無言電話の犯人だと思っているようだが…」

俺の眉がぴくりと動き、反応する。

「随分、短絡的じゃないか」

「なんだと…?」

俺はゆっくりと振り返った。目の前には、不適に笑う橘の姿がある。

奴の目に、俺はどういうふうに映っているのだろうか。

その笑みの中に、同情心がちらちらと見え隠れする。俺は、ますます奴を睨みつけていた。まるで、威嚇する犬のように…

「俺は彼女を幸せにする自信がある。しかし、お前はどうだ? 元付き合っていた人の弟だというだけのお前は、まだまだ青臭いガキだ。そんなお前に何ができる?」

そう話す奴のあの切れ長の目が、三日月のように細くなって俺を捉えている。

それを見た瞬間、俺の頭に一気に血が上る。

「なんだと…っ」

俺は既に手が出ていた。橘の胸倉を掴み、顔がくっつきそうなくらい近づけて、その見下したようにに笑う奴の顔を睨みつけた。

しかし橘は力付くでそれを振り払い、俺はその弾みで廊下に尻を付いた。奴は平然と乱れた衿やネクタイを素早く直している。

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