きみが見た光
「真白。橘先生と何があったかは知らないけど、殴るのはやめてよ。あんたは健よりもっと冷静だと思ってたんだけど…」

腕組みをし、息子の失態に驚きと戸惑いを隠せない母は、自分を落ち着かせようとタバコに火を付けた。

「まさか、あの子が原因だったりはしないわよね…?」

母は眉間にシワを寄せて、俺の顔を見つめる。

さすが、するどいな

「奈緒ちゃんがあんたの学校にいるなんて…」

"なんの運命なのかしら"

多分、そう言いたいのだろう。

細く長く吐き出された煙を眺めながら、母親はつぶやいた。

その目は、きっと
思い出しているのだろう

忘れかけていた記憶が一気に蘇り、母親の目色が寂しさで蒼くなっていった。

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