きみが見た光
たいして面白くもない始業式が終わり、また教室に戻る。

式が始まる前と全然違う俺に気付いていた圭だったが、状況があまりよく飲み込めず、声をかけることをためらっていた。

俺は興奮が収まらず、教室に戻る道中、大股で歩いていた。



教室に戻ると、またさっきの席に着いた。

「さっきの新しい先生、一番右端の奈緒ちゃん、可愛かったなー…」

圭のその一言に、俺の眉はピクリと動く。

「何だよ、そんな怖い顔して」

俺の反応に、ヤツは苦笑いを浮かべた。

それ以降、圭の呼ぶ声が耳に届いてはいたが、俺は振り返りもせず、多分いつもの仏頂面を浮かべて座っていた。

「シカトすんなよなー、お前ー」

たまり兼ねた圭が顔をしかめて文句を言う。しかし、俺はそんなものに構ってはいられなかった。

構えなかったのだ。

こんなところで、あんな奴と再会するなど考えてもいなかったからだ。

思い出すと、また手に汗をかき、頭に血が上る…

あの女だけは、許せない…






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