きみが見た光
『…奈緒?』

彩夏の口調が沈んでいく。

「え…?」

『ごめん。…事情、ちゃんと解ってるつもりなんだけど、真白がそんな風に近藤先生のことを呼ぶことに、あたしちょっとショック受けてる…』

彩夏……

『ごめん… いいの。気にしないで。ごめん』

彩夏は何度も謝っていた。俺はその言葉を飲み込むことしかできない……

「彩夏。俺がお前に言ってやれることは、悪いけどそれくらいしかねぇんだ。…俺のことは大丈夫だから」

俺が念を押すと、彩夏は小さな声でうなずいた。

「彩夏。」

一呼吸を入れる。

彩夏の健気な気持ちが俺を穏やかにしていた。

「ありがとう」

はっきりとそう告げた。その気持ちが、強いバネになるように…



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