きみが見た光
9.路上にて
「まっ… 真白くん…」

玄関の前で座り込んでいた俺を見た奈緒は、心底驚いた様子で口にした。

「どうしたの? なんでここに… 謹慎中でしょ」

突っ立っている奈緒をよそに、俺はデニムの裾を手で払い、静かに立ち上がった。

「…今帰り? 随分遅いんだな」

目を細め、携帯で時間を確認した。

夜、10時半少し過ぎ

「あの変態ヤローと飯でも食ってたわけ?」

皮肉を込めた言い方しかできない俺を見て、奈緒は顔をしかめた。

「あなたには関係ない」

「あっそ。んじゃ俺、帰るわ」

俺は小さく手を挙げて、彼女の前を通り過ぎる。

「あ…」

俺が通り過ぎた瞬間、奈緒は俺を呼び止めようとしたが、開きかけた口を結んだ。

いくら知り合いでも、謹慎中の生徒を中に入れるわけにはいかない…

実際にそう思ったかは解らないが、とにかく奈緒は俺を呼び止める事なく、俺の背中を見送っていた。



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