きみが見た光
(ベ……?)

橘が奈緒に差し出したモノを見て、俺はそれに目が釘付けとなった。

「邪魔だからって、外したでしょ。あの時」

妙に語尾を強調するその言い方が、カンに障る。

「あ、あぁ… そうでした」

両手を出して、奈緒は橘から太くて柔らかい革のベルトを受け取っていた。

("あの時"…?)

俺の眉がぴくりと動いた。

橘はそんな俺の顔を見て、わざと含みを持たせて不適に笑う。

今着ているワンピースのバストの下辺りにに締めると、ちょうどいい感じの茶色のベルト…

それを外す状況って…

「今日はどうですか、無言電話」

橘は心配そうな顔を覗かせて、奈緒に尋ねている。

「この間盗聴器を見つけてくださったお陰で、覗かれているような感じは無くなりましたわ」

いくらか明るい笑顔を見せて、奈緒は答える。

「そうですか。よかった。それじゃ、これで」

橘は踵を返し、来た道を戻っていく。そして、橘は対抗車線に路駐していた車に乗り込み、颯爽と走り去って行ったのだ。

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