きみが見た光
「…手料理をご馳走になったんだけど、お腹が苦しくなっちゃって……」

奈緒は、決まり悪そうに顔を赤くしてつぶやいたのだ。

「手料理…だって?」

「う、うん…」

立ち尽くす俺に、彼女は小さくうなずいた。

「あっぶねぇなっ! 変な薬飲まされたらどうすんだよっ!!」

突然の怒号をくらい、奈緒は口をぽかんと開けていた。

「薬って何…?」

「だから言っただろっ! あいつは無言電話の犯人なんだよっ!! 自作自演してる変態なんだ、あいつは!!」

しかしいくら俺がそう力説しても、彼女の目は揺れるばかりだった。

「…今日、とても楽しかったよ? 怯えてる私を元気にしてくれようと、料理を振る舞ってくれて… とても紳士に振る舞ってくれたのよ? なんでそういうこと言うの?!」

顔を赤くしてまでムキになり、あいつを庇う奈緒が、遠くに感じた。

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