きみが見た光
…なんで、だと?
何で気付かない?
お前、騙されてるんだぞ?
あいつは、女を弄ぶ変態で、
お前ん家に無言電話して喜んでるような奴なんだぞ?!

また心を失った自分に戻るのかよ…!!



「あいつのことがそんなに好きなの?」

「え…?」

「もう、昔みたいに傷付いて、魂が抜けたようなあんな目を見たくないんだ…」

あ…
まただ…

また俺の目からは

「…私の、事?」

奈緒は間近に立ち、俺の顔を覗き込む。そして、一瞬だけ瞳が大きく揺れた。

「どうして真白くんが泣くの…?」

彼女は俺の両腕を力強く掴み、理解不能と言わんばかりに問い掛けた。

「…そんなに私が健から離れて行くのが許せないの? それは違うって言っ…」

「そうじゃない。…もう、そんなことは関係ねぇよ」

流れる涙を見せなくなくて、俺は顔を背けるように下を向く。

「だったら…」

奈緒はあの白くて長い指で、俺の涙をそっと拭う。それはそんな彼女の白い手を握った。

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