きみが見た光
「…俺じゃダメかな」

つぶやくように、そっとそう口にしていた。

もう限界だ
隠し通せない

苦しくて苦しくて
死んでしまいそうだ

『さて、彼女が選ぶのは青いガキか頼れる大人の男かどっちでしょう?』

橘の意地の悪いセリフが、頭の中を過ぎる。

しかし、今はそんなことを考えてはいられない。あの頃から抱いていたこの気持ちに、偽りなどないのだから…

「ま、真白くん… そんな… 嘘でしょ」

「嘘で、こんな事言わねぇよ…」

お互いが、お互いの目を見る事ができなくて、俺の頬に触れる彼女の手の力が徐々に抜けていくのが解った。

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