きみが見た光
「…でも」

もういいよ
もう解ったよ

これ以上、余計な言葉を無理して紡ぐ事はない

所詮、俺は兄貴にも橘にも敵わないんだ。

「…いいよ、もう」

これ以上、惨めにさせないでくれ。

やっと言えた一言だった。

気持ちを押し殺すのも苦しかった。なのに、気持ちを解禁するのも、こんなに苦しいものなのか…

俺は奈緒をそこに置いたまま、その場から離れた。歩いていたその歩幅が次第に大きくなってゆき、しまいにはもう走っていた。

そんな俺の後ろ姿を、彼女はどんな顔をして見ているのだろう。

同情なら、いらない

俺の想いが伝わらないのなら……



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