きみが見た光
家に帰り、ただいまも告げずに一目散と自分の部屋に向かう。

「真白ー? 謹慎中のクセに遅くまでどこ行ってたのー?」

階段の下から、母親が大声で尋ねてくるのが聞こえたが、それに俺が答えることなく、ぴしゃりとドアを閉めてしまった。

かばんを放り、脱いだジャケットはそのまま床に脱ぎ捨てて、ベッドに仰向けに寝そべった。

あの人を、もう救うことはできないのか

今も魔の手は伸びているというのに
解っていることのに

橘はどうして奈緒にちょっかいを出すんだ

イタ電をして彼女の恐怖を煽り、変態を演じる。その恐怖を今度は別の仮面を被り、彼女を労り、心強い存在と印象付ける。

そんなふうにして、奈緒を弄ぶんじゃねぇ…!



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