きみが見た光
俺がそう考えていると、パーカーのポケットの中で携帯が、バイブで震え出した。

手を入れて携帯を取り出すと、鳴らしていたのは圭だった。

「どした?」

奈緒のマンションから離れ、人通りの多い通りの方へと歩きだした。

『…大変だよ、真白。彩夏が……』

いつものあの圭のおちゃらけた空気ではなかった。

俺は眉根を寄せて、やつの言葉に集中する。

…なっ
何だって……?

圭からの突然の知らせを聞いた俺は、言葉を失っていた。

『真白』

圭の冷静を装う声で、俺は我に返った。

「あぁ、悪ぃ。ちょっとびっくりしちまって… 今、彩夏は?」

『多分、もう帰ってると思うけど。…あいつらバカだから、部室で騒ぎを起こしやがって』

俺の口から、小さな溜息が漏れた。

「すぐ行くよ」

それだけ告げて、俺は通話を切った。



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