きみが見た光
「盗聴も、野崎だったの? あのいたずら電話も?」

呆れた顔をした俺はそう尋ねると、奈緒はうなずいた。

「盗聴器は、私の上着のポケットに入ってたの。これも野崎くんが入れたみたいね」

「橘が見付けたってヤツ?」

奈緒はまたうなずいた。すると今度は俺の口から大きな溜息が漏れた。

「…で、わざわざそんなことを教えるためにこんなとこまで来たの?」

溜め息混じりにそう尋ねると、奈緒は首を横に振った。

「…健に、お線香をあげさせてほしいんだけど」

奈緒は、申し訳なさそうにそう告げたのだ。俺はドキッとした。

「兄貴に報告することでもあるの?」

胸の轟きを悟られまいと、必死に平然を装おうとする。

「それだけじゃないわ。今まで逃げていた分、ちゃんと償わなくちゃ」

そんな俺を知ってか知らずか、彼女は覚悟を決めたような真剣な目でそう言ったのだ。



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