きみが見た光
興奮する母親を宥めたものの、そんなことでは落ち着けるわけがなく、線香もあげられないまま奈緒は追い出される結果となった。

俺はすぐさま奈緒を追い掛けて、外に出る。

「奈緒…」

街灯の下で呼び止める。彼女の瞳は、悲しく揺れていた。

「見たでしょ?」

「え?」

「あなたのお母さんの反応、見たでしょ?」

改めてそう言い直す奈緒に、俺は少しだけ俯いた。

「…あなたが、私と繋がっている限り、悲しむ人がいるの」

暖かいはずの春の風が、冷たく感じる。今晩は、そんなに冷えていないはずなのに…

「それが、俺への答えなの?」

俺は静かに尋ねた。

彼女は小さくうなずいた。

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