きみが見た光
担任になった澤井の話が終わると、今日はもう自由となった。

ふたりの教師はさっさと教室をあとにし、ざわめく教室からは次々と生徒が帰っていく。俺もその波に乗ろうと、かばんを肩にかけ、立ち上がった。

「帰ろうぜ」

圭に声をかけ、後ろのドアから出ていこうとすると、そこに人影を感じた。

それでも俺は構わず教室から出ていこうとドアに向かった。

やっぱね…

後ろのドアから教室内を覗いていたのは、奈緒だった。

ドアの敷居をまたぎ、廊下に出た俺は、彼女の前を目も合わさずに通り過ぎた。

「…っ…!」

奈緒は、俺に話し掛けようと俺の肩に触れようとしたが、出した手を引っ込める。

彼女は言葉を発っせられないまま、俺の横顔を見ただけで、その場に立ち尽くしていた。




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