きみが見た光
「犯人扱いしたこと、謝れとか言うわけ?」

俺は思いっ切り不満な顔を向けながら橘に言った。

ついて来るように言われ、その通りにすると、そこは日陰で、少しだけジメジメとした体育館の裏だった。そこで俺と橘は向かい合っている。

てっきり勝利宣言でもされるのかと思い、溜息が出そうになる。

シラけるんだけど…

「お前、知ってるか。奈緒さんは、7月末でこの学校を辞めることになっているんだ」

橘は静かにそう告げた。

その表情は、勝利宣言の憎たらしい顔とは程遠く、何となく寂しさを滲ませている。

「…ふーん」

俺はそれだけ言うと、来た道を戻ろうと踵を返す。

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