きみが見た光
「お前、俺を殴っちまうくらい本気だったんだろ?」

橘の冷静な声が、俺の背中にそう問い掛けた。

「……」

俺は、何も言わなかった。

そんなこと、お前に言って何になる?

人にペラペラ自分の気持ちを簡単に言えちゃうほど、俺は馬鹿じゃねぇ

「…お前の背中、スゲー寂しそう。解りやすいな」

笑う橘。

俺は少しだけ顔を傾け、奴の顔を見る。

その笑顔は、同情でもなんでもない。俺と同じ顔をした橘が、寂しそうに笑っていたのだ。

俺は顔をしかめて舌打ちをした。そして、そのまま校門に向かって歩き出した。



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