きみが見た光
『さっ、さようならっ! 勉強、頑張ってね』

さっきの奈緒の声が、耳にへばり付いていた。

もう聞くことのない彼女の声が、未練たらしく響いていた。



夏の始まり。

うるさいくらいの蝉の声
どこまでも続く青い空
もくもくと煙のような入道雲
殺人的な強い日差し

夏が来る度に、
この暑さを感じる度に

今抱いている苦い感情を思い出すのか。



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