きみが見た光
「真白、くん…」

すれ違い様に、俺の名を呼ぶ。

「……」

俺は呼ばれた方にさえも向かず、ただ下を見ながら足を止めた。

「この学校の生徒だったのね。…久しぶり。元気だった?」

(奈緒…)

俺はあからさまに溜息をつき、また歩き出す。

「あ、待って」

奈緒は俺の左腕を掴んでいた。俺は奈緒に睨みをきかせた。

「…放せよ」

ドスをきかせたつもりはないが、かなり低い声だったと思う。奈緒は、パッと掴んだ俺の腕を放した。

「あなたがまだ私を許せないのは解ってる… でも」

「解ってるなら、俺に近づいて来るなよ」

俺は、また歩きだそうと足を出す。すると、奈緒は今度は俺の上着の裾を引っ張ったのだ。



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