きみが見た光
「うるせーな。話って何?」

さっきよりも乱暴にそう口にしていた。

その時、彼女の背後からカツカツと靴の音が聞こえてきた。パリっとしたスーツを着た男だ。

「近藤先生?」

男に呼ばれ、奈緒は振り返る。

「あ… 橘先生」

「どうかしたんですか?」

橘は、俺と彼女の顔を交互に見る。その切れ長の目は、俺を見たときにさらに細くなった。

「1限のチャイムはとっくに鳴ってるぞ。学籍番号は?」

「いえ、あの… 今、注意したところですから…」

橘の厳しい口調に、奈緒は俺を庇うように間に入ろうとする。しかし、それでも橘の表情は変わらなかった。

「3412、榊 真白」

俺は彼女の精一杯の気持ちを無視し、橘に告げた。

「すぐに教室に行け」

背中を押されるように橘に言われると、俺は歩きだし、奈緒と橘を追い越した。



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