きみが見た光
目の前の惨劇を奈緒は目の当たりにした。

それからの彼女はというと…

目の前に起きた現実を受け入れることができず、記憶をなくし、全くの別人になってしまったのだ。

当然、兄貴の葬式にも来なかった。

俺は、あんなに兄貴との繋がりが深かったはずの奈緒が、兄貴との関係を一切無かったこととして過ごしていることに苛立ちを覚えていた。

なんでだよ…
なんでなんだよ…!!

俺は何度も奈緒の元へ足を運んだ。しかし、その訪問は奈緒の家族に断られていた。

一度だけ、外から奈緒の姿を見たことがある。

彼女の目には、光を無くしたように淀んだ瞳でぼーっと窓の景色を眺めていた。



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