きみが見た光
気の済むまで絵に没頭していると、日もだいぶ傾いていた。

(…結局、みんなサボりかよ)

俺は苦笑いを浮かべた後、溜息を吐き、後片付けを始めた。

部室の鍵をかけて、またあの渡り廊下を渡る。するとさっきも通り掛かった第一音楽室の前をまた歩いていた。

何となく人の気配を感じた俺は、入口のドアの小窓から、何気なく中を覗いて見た。

(…あ)

やはり。

奈緒は、教室の黒板の斜め前に置かれているピアノの椅子に座り、何やらボーッとしていた。

(…仕事しろよ)

そんなことを思い、俺は通り過ぎようとしたとき、ピアノの音色が耳を掠めたのだ。



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