きみが見た光
その時だった。

甘い香りが俺の鼻孔をくすぐった。一瞬、何が起きたのか理解ができなかった。

しかし、すぐに人肌の暖かさに気付く。

俺の背中に回された、彼女の細い腕。

「ごめん… 真白くん、本当にごめん…」

耳元には、涙に混じった彼女の消え入りそうな弱々しい声…

今更、かよ…

しかし、今の俺には彼女を振り払うことができなかった。




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