きみが見た光
「お前、カラオケ行かなかったのか」

俺の横に並んだ彩夏は、うなずいた。

「真白は、質問攻めに遭いそうだから、逃げたんでしょ」

彩夏は、俺の顔を指差して笑った。

「ねぇ」

俺の顔を覗き込むようにして、彩夏は俺の左腕を引っ張った。

「…なんだよ」

「近藤センセとは、本当になんでもないんでしょう?」

彩夏の目は、好奇心に溢れていた。俺は溜息を吐きながら、彼女を白い目で見つめ返してみる。

「うるせぇよ」

俺は彩夏を手で追い払う仕草をすると、足早に足を運ぶ。それでも、彩夏は俺に付いてくる。

「みんな、怪しがってるよー? だってさ、火のないところには煙は出ないって言うじゃん」

すぐ後ろを歩く彩夏は、俺の背中を指で突きながら話していた。



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