きみが見た光
まんざらでもない様子の奈緒の顔が見えたとき、俺の中で何かがぶちギレるのを感じた。

なっ…
なっ……!!

俺の額には汗が吹き出していた。顔は多分、赤いはずだ。

そして、体は震えていた。

寒い訳ではない。

そう。これは、怒りだ。

「…真白?」

あまりの俺の変貌に、彩夏は戸惑いを隠せない。

彼等は駅を使うことなく、予備校とは反対側通りに向かって歩いていく。

「うわー、あっちってホテルいっぱいあるじゃん…」

顔をしかめながら彩夏はつぶやいた。

…奈緒のやつ、ふざけやがって

俺は怒りに震えながら、街の雑踏に消えていく奈緒達の姿を見つめていた。

よりによって、あの橘と…?

どこまで兄貴をコケにすれば気が済むんだよ…?!

遠くの方で、俺の名を呼ぶ声がする。

しかし怒りに震えている俺には、もはや耳には入ってくることはなかった。



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