きみが見た光
定位置にかばんを置き、道具箱から絵の具で汚れたエプロンを取り出すと、首から被り、絵の具の準備を始めた。

学校にいるときで一番落ち着く時間

静かで誰もいない空間

あんなにたくさんの高校生が通っているこの学校で、奇跡のような世界が広がっているのだ。

窓の外からは、運動部の掛け声など、喧騒が微かに聞こえてくる。

しかし、集中している俺の耳には、関係なかった。



「…真白くん」

突然の呼び名に、肩をビクつかせながら驚き、俺は振り返った。

すると、そこには美術室を物珍しそうに見渡している奈緒が立っていたのだ。



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