きみが見た光
「…私は、幸せになってはいけないの?」

そんな俺に、真っすぐな瞳で奈緒は尋ねた。

当たり前じゃないか…
償えないなら、一生背負って生きるしかないじゃないか。

幸せになれる権利なんか、お前にあるもんか……!!



次第に呼吸は乱れ、俺は肩で息をしていることに気付く。

顔を背けると、俺は乱れた呼吸を整えるため、目を閉じた。

まぶたには、たった今焼き付けられた奈緒の強い眼差しがチラチラと揺れていた。


"幸せ"ってなんなんだ…?

兄貴が願っていたことってなんなんだ?

奈緒が幸せになることを、心から望んでいるのは、兄貴…?

そんなはずはない。

兄貴は、恨んでいるはずだ。この白状女のことを…

兄貴の存在自体を、消し去った女のことを…



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