きみが見た光
じんわりとかいた額の汗を拭いながら、俺は自販機の前で壁に寄り掛かってコーラを流し込んでいた。

知らず知らずのうちに溜息をついていることに気付く。

(…帰るかな)

空っぽになった缶を、くずかごに入れてゲーセンの出入口の自動ドアをくぐった。

遊んだら、いくらか忘れることができた。しかし、目を閉じようとすると、まぶたに焼き付いた奈緒の顔がチラチラと消えては浮かぶ。

(…クソ)

昔ながらの狭い駅前を、後ろから来る車に構うことなく歩いていると、コンビニの看板が目に入った。

駅の1階に入っているコンビニだ。

(…確か今日はジャンプの発売日)

人を掻き分け、なんとか改札に続く階段の下に辿り着く。

(いつきても、無法地帯だな…)

人口の多い割に、歩道が狭いこの区は、他の区より道路整備率が悪い。

駅に電車が着くと、人がバスのロータリーにまで溢れてしまい、警備員の笛の音は鳴りやまなかった。



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