きみが見た光
頭に響くあの高い音にうんざりしながら歩いていると、前を歩いている細身のおばさんのバッグから、何かがポテっと落ちたのだ。

(あ…)

後ろに気を付けながら、それを拾ってみると、それは定期入れだった。

「すいません、落ちましたよー」

立ち止まっていた分、先に行ってしまったおばさんを早足で追い掛け、俺は拾った定期入れを差し出した。

「あら、ごめんなさい」

おばさんが俺の方に振り返る。

その細面の色白な顔を見て、俺は驚いていた。



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