きみが見た光
『真白ーっ! 今どこぉ?』

彩夏の超不満そうな声が、俺の鼓膜をつんざくように受話器から溢れてくる。

「い、家?」

『なんで疑問形なのよ』

半ば呆れた様子の彩夏は、小さく溜息を吐いた。

「悪い。ちょっと… な」

『もー、なによ、それぇ? お陰で野崎に付き纏われちゃって大変だったんだからね!』

受話器越しに聞こえてくる彼女の不機嫌な声に、俺は頭を掻いていた。

「悪かったって… 明日は気を付ける」

彩夏の怒りを抑えるために、つい簡単に飛び出した言葉でに謝る俺。

『ふーん、そう。…解った』

随分と聞き分けがいいな…

そんなふうに簡単に彩夏がうなずいていたことに、俺は少し意外に思っていた。

『そのかわり』

「え?」

『明日の帰り、アイスおごって』

「なんでだよー」

俺は思いっ切り不満を漏らした。

『約束破ったんだから、当然でしょー』

彩夏はむくれながらそう主張する。

やっぱり、簡単にはいかないか…

俺は、面倒臭そうに渋々それを了解して電話を切ろうとした。



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