きみが見た光
俺は、兄貴が嬉しそうに話す様子をウザい顔を向けながら聞いていたものだ。

『俺さー、好きな子ができちゃってさー。超可愛いんだよねー』

兄貴は、俺のこめかみを無駄にグーでグリグリしてくるんだ。

『痛いよ、兄ちゃん…!』

嫌がる俺にお構いなしの兄貴は、そのまま続ける。

『でもふとした時に、悲しい目ぇするんだよ。なんか、余計に放っとけなくてさ…』

兄貴は、そんな奈緒の心の闇に気付いていたのか。

3人で会う時、俺には決して見せなかった"悲しい目"を、唯一、心を許せることのできた兄貴には…



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